スペシャルインタビュー

第1回 ヴァイオリニスト 川畠成道さん
1000人の人がいれば、音楽は1000通りの聴き方がある

川畠成道さんは、桐朋学園大学を卒業後、イギリスの王立音楽院を主席で卒業。イギリスと日本を拠点に精力的な音楽活動をされているヴァイオリニストです。川畠さんがヴァイオリンを始めたのは、小学校5年生の時。3年生の夏休みにかかった難病で視力に後遺症が残り、それまでの生活とはまったく変わってしまい、重く沈んだ毎日をおくっていたそうです。5年生になり、ヴァイオリンを始めたことで、気持ちが明るくなり前向きになったという喜びが、その後もずっと弾き続ける原動力になっているとのこと。川畠さんに、音楽を通して得たこと、「音楽は、世界共通のことば」と感じた経験などをうかがいました。

「必ずこうでなくてはいけない」ということは、ないんだ。

川畠 成道さん

日本で大学を卒業して、22歳でイギリスに渡ってから、自分の音楽が変わったと思います。音楽の勉強をするので、日本とイギリスでの生活は大きく違うことはなく、同じように毎日毎日、目の前にある勉強する曲を弾いているわけです。でも結果として出てくるものが違う。考えてみると、日本では先生の課題を忠実に克服するのですが、イギリスでは自分が主体的になって、出てきたものに先生が方向付けをしてくださるので、より自分が強く出てきたと思います。そして、自分を一番表現したいものを十分表現できたときに、はじめて評価されます。また、クラスにはいろいろな国から来た学生がいて、それぞれアプローチの仕方が全然違います。技術がどうのという話ではなくて、コンセプトがまったく違う。考えてみればそれは当たり前で、みんな育ってきた環境が違うんです。だから同じものを弾いても、違ったものが出てきます。極端に言うと、今までそれはいけないと思っていたものの中に、実は素晴らしいものがあったり。自分が今まで思っていたことを改めて考えさせられるということは幾度となくありました。そうした経験を重ねた中で、いろんな可能性があるんだな、とか、必ずこうでなくてはいけない、ということはないんだ、という考え方を教えられました。そうした経験ができたのも、自分に音楽があったからで、その音楽を通して、他の人たちのことを知ることができたわけですね。同様に、他の学生には音楽を通して自分を知ってもらうことができました。そうした意味で、自分にとって音楽が与えてくれたものはすごく大きいと思いますね。

1000人の人がいれば、音楽は1000通りの聴き方がある

器楽には言葉がありません。歌や、文学、詩は言葉を通して伝わるものがあると思いますが、器楽には言葉がない分、人によって同じ音楽を聴いても感じ方が違うと思います。演奏する側も、同じ曲を弾いても弾き方が変わります。例えば、ひとつのコンサートで1000人の聴衆の方がいらしたら、それぞれ聴き方が違って、1000通りの聴き方が生まれるということですね。それだけ音楽は可能性が広いし、自由でいいんだと思いますね。クラシックは、100年、200年、それ以上残ってきた音楽です。素晴らしいから残ってきたと思いますし、同時に時代によって音楽は変わっていると思います。モーツァルトが曲を作った当時の演奏と、我々の今の演奏では全然違うでしょう。でも形を変えつつ生き残ってきて、これからも生き残っていくというのは、やはり幅があり、自由なものなのだと思います。

演奏することで、こちらが与えられることもある

子どもの時の体験は貴重ですよね。私の小学校は全学年合わせても100人ちょっとの小さな学校だったのですが、上条恒彦さんが学校に来てギターを弾いてくれました。今でもテレビに上条さんが出ていると、「小学校の時に来てくれた人だ!」と思います。また、自分が10年くらい前に中学校や高校で演奏したときの生徒さんが、今コンサートに足を運んでくれることもあって、それはとても嬉しいです。行って演奏することは、なにかを与えることもあるし、こちらが与えられることもあり、大切なことだと思います。

川畠成道さん、お時間をいただき、本当にありがとうございました!